FXをトレードする上でメンタルコントロールは重要?
FXでいつも負けてしまうのはどうしてだろう?
メンタルを強くするトレーニング方法って?
90%のトレーダーが負けると言われているFXの世界。
残りの10%のトレーダーは、どのようにメンタルコントロールを行っているのでしょうか?
今回はその疑問とメンタルの鍛え方について解説します。
FXトレードにおいてメンタルコントロールは重要?
FXでトレードをする人は、全員お金を増やすことを目的としています。
そして相場は上がるか下がるかしかないので、勝率が50%ならサイコロを振っても勝てそうに思えます。
しかもトレーダーには、相場が上がっているのか下がっているのかを知ることができるチャートツールがあり、サイコロを振るよりもはるかに高い確率で勝てるはずです。
しかしFXの世界では、90%のトレーダーの負けを10%のトレーダーが持っていくという図式が成り立っています。
ではなぜ、勝率50%なのに全体の90%のトレーダーが負けてしまうのでしょうか。
負けることばかりをしてしまう心理
トレーダーは全員人間ですから、みなそれぞれ感情があります。
勝てば喜び、負ければ悔しいとう感情が自然に沸き上がってきます。
では自然な感情のままにトレードをしたと仮定します。
1回のトレードで1万円が増えた時の気持ちを考えてみましょう。
勝った時はまだメンタルにダメージを受けてないため、正しい判断ができるので大きな問題にはなりません。
では負けた時はどうでしょうか?
パチンコで財布の中が空っぽになるまで負けてしまった経験はありませんか?
「これで最後」と冷静なつもりでも、勝つまで賭け続けてしまって結局勝つ前にお金がなくなってしまった経験は?
FXで負けたトレーダーの多くも同じ感情を抱き「次のトレードで前回の負けを取り返そう!」と考えます。
ある程度経験を積んだトレーダーは、この時点ですでに正しい判断ができないメンタル状態に陥っていることもわかることでしょう。
しかし、ほとんどのトレーダーはこのように平常心を無くして正しい判断ができなくなっていくのです。
トレーダーが陥りやすい負けパターン
いかにメンタルコントロールが重要かを知るために、トレーダーがよくハマる負けパターンについていくつか見ていきましょう。
連勝マインド
「自分は今月1回も負けていない、今週は全勝だ」というときに良く起こるメンタルパターンです。
これはトレーダーが自分の成績にこだわるあまり、正常な判断ができなくなっている例です。
損切りが必要な場面でも損切りしにくくなる
どんどん含み損が膨らみ、ポジションはより切れなくなる
最悪の場合、強制ロスカットまで放置
トレーダーは、勝率100%などあり得ないということを忘れてはいけません。
そして連勝しているときは、過去のことは忘れなければいけません。
もしくは、わざと1回小さく損切りして連勝を自分で止めるのもいいアイデアです。
この連勝マインドは恐ろしい落とし穴だということを覚えておきましょう。
連敗マインド
連敗マインドは連勝マインドとは逆に、連敗が続いていると負けて資金が減ることを恐れるあまり、ほんの小さな含み損にも耐えられなくなってすぐに損切りをしてしまう精神状態をいいます。
本来なら、損切りオーダーまでは含み損があっても黙って見ていればよいだけなのです。
しかし「連敗が続くとまた負けるのではないか」というネガティブな憶測が勝手に大きくなり、損切りオーダーのはるか手前でポジションを切ってしまったりします。
そのあと予想した通りに相場が動いてもポジションはすでになく、小さな負けをたくさん積み重ねることになります。
負けるのが怖いときは、正しいトレード判断ができないことを知っておきましょう。
連敗しているときは、ポジションサイズを小さくするなどして精神的な負担を一時緩和し、ルールに従ってトレードするべきです。
そして戦略通りに勝って連敗マインドがポジティブに転換するのを待ちましょう。
もしくは、デモトレードで取引の感覚や自分の戦略が正しいことを確認し、自信を回復させるのも良い方法です。
トレードの自信は、勝つことでしか回復できません。
デモトレードでも0.01ロットでも、とにかく「勝つ」という以外にトレーダーに自信を与えてくれるものは何もない、ということも覚えておきましょう。
勝とうとする気持ちが強すぎる
1回1回のトレードに感情移入しすぎる場合や、勝たなければならない、などの思い込みが強い場合は正常な判断は失われます。
例えばゴルフの最終ラウンドの最終ホール、同じスコアで最後のパット勝負になったとします。
1人はこれを入れれば優勝だ、勝つんだ、絶対にこれを入れて優勝するんだ、と強く念じているプレイヤーです。
もう一人は、何も考えず、最後のパットだけに集中しています。
どちらがパットを入れる可能性が高いでしょうか?
答えは何も考えず「目の前のことだけに集中しているプレイヤー」です。
なぜなら、このプレイヤーは勝つか負けるかではなく、自分の力を出すことだけに集中しているからです。
勝とうとしているプレイヤーは勝つということに意識が行ってしまい、プレイに集中していないので、自分の力を十分に出すことが難しい状況を自ら作り出しています。
トレーダーも同じです。
勝ち負けではなく、目の前の相場と自分のポジションのことだけを考えれば冷静で正しい判断ができるはずです。
勝ち負けにこだわっているときは、自分の力は半分も発揮できないということを覚えておきましょう。
以上、トレーダーが負けるときのいくつかのパターンをご紹介しました。
これ以外にも負ける要素はいくらでもありますが、その多くがトレーダーのメンタルに起因しているということは間違いありません。
トレーダーは自分の中に、もう一人の自分がマネージャーとなって自分を監視している、というくらい厳重に自分のメンタルを常時チェックしておく必要があります。
トレーダーが陥りやすいメンタルのパターンをお分かりいただけたでしょうか。
トレーダーが知っておくべきプロスペクト理論とは
ダメだと分かっていても自分で自分を止められない、勝つまでやり続けてしまう、こういう心理は何も特別なものではなく、人間なら誰しも持っている自然な心の動きです。
日常的に感じる自然な感情であるがゆえにそれが当たり前だと思ってしまい、あぶない精神状態と思考パターンにハマっている自覚がありません。
そのため、自分のやっていることの不合理さに気が付くことは難しくなります。
そのお金に関する人間の自然な感情や思考パターンをまとめた「プロスペクト理論」はトレーダにとって必須の理論です。
プロスペクト理論とは
人間は喜びよりも苦痛の方を強く大きく感じるため、苦痛をあらゆる方法で回避しようとする心理が非常に強く働くという理論。
2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンとエイモス・ドベルスキーが提唱。
トレーダーは損失を確定することに大きな抵抗を感じ、もしかしたら損失が利益に変わるかもしれないという期待と、なんとかして損失を回避したいという感情に負けてしまいがちです。
それゆえ、損失の確定をしない、もしくは先延ばしすることを自然に、無意識的にやってしまうのです。
例をあげて説明しましょう。
例1:ある日突然100万円を現金でもらった場合
ところが立ち寄った公衆トイレに100万円を置き忘れてしまう
気づいて慌てて戻ったときには100万円は消えていた
せっかくもらった100万円が自分の単純なミスでなくなってしまったときのショックははかり知れませんよね。
しかし100万円もらって100万円なくしたということはプラスマイナス「ゼロ」ですから、実際は得も損もしていません。
なのにものすごく損をした感じがしませんか?
その感情が「負けトレーダー」を大量生産させる人間の心理なのです。
例2:100万円の借金がある場合
あなたに100万円の借金があるとします。
B:50%の確率で100万円の借金が0になるが、50%の確率で借金はそのまま残る
Bの方が「得だ」と感じて、Bを選択した人の方が多いのではないでしょうか?
これがプロスペクト理論です。
リスクがあったとしても損失を回避するためならそのリスクを恐れず受け入れてしまう、という思考パターンです。
50%で借金がなくなるのなら、そっちに賭けてみようという心理が強く働きます。
いつの間にか頭の中は借金がなくなることが前提になり、賭けが外れた時に借金がそのまま残るというリスクは忘れてしまいます。
損失回避のために働く人間の心理は、これほど強く思考を支配しているのです。
FXにおけるプロスペクト理論
あるトレーダーが、相場が上がると予想しポジションを取ったものの、しばらくすると相場は下落をはじめ含み損が増えていったとします。
その時の、心の声を聴いてみましょう。
損切りまで20pips
相場はますます下落したあと数pipsのところでストップオーダーというところ
トレーダーはストップオーダーをさらに20 pips下にずらす
ナンピンの買いオーダーを入れる。相場はさらに下がり含み損は証拠金の50%にまで膨らむ
※ナンピン:相場の進んでいる方向とは逆のポジションを持っている時に、逆のポジションをさらに追加して平均コストを下げる取引方法
(例)1ドル110円のときに1ロット買い、1ドル100円の時に1ロットを追加で買う→保有ポジが105円2ロットと同じ
塩漬けポジションを抱えたまま相場はさらに下がる
※塩漬け:予想通りに動かなかったポジションを決済せずに、戦略がない状態で長期間持ち続けている状態
これがFXトレーダーがプロスペクト理論で大負けするときの一つのパターンです。
次は、買いポジションを入れ利益が出ている状態での心の声を聴いてみましょう。
買いポジションを入れ3万円の利益が出たところで頭打ち
※頭打ち:上昇基調が続いた相場の勢いが鈍り、伸び悩んできた状態。 相場が大天井に達してこれ以上の上昇が期待できない場合と、もちあい状態で新たな材料が出ることで再び上昇基調になる場合がある
相場は少し下がって含み益は2万7000円になる
利益確定したあと、相場はまた勢いよくどんどん上昇
慌てて買いを入れるものの、そこからは下落してどんどん含み損に
相場はさらに上昇し、含み損は3万円にまで膨らむ
このような状況は、身に覚えのある方も多いかもしれません。
90%のトレーダーが負ける理由
人間は喜びよりも苦痛を避けることを優先させるようにプログラムされています。
人類の長い歴史からDNAに刻み込まれているレベルの話なので、人間であれば例外はありません。
その感情は自然なことなので押さえようと思っても押さえることはできません。
ただ、その感情に従ってトレードすると非常に高い確率で負けてしまいます。
これが90%のトレーダーが負けて10%のトレーダーしか勝ち残れない理由です。
トレードの技術ではなく、メンタルが勝ち負けを決めているとも言えます。
トレードにおける「期待値」
トレードにおいて、上述した「喜びよりも苦痛を避ける」心理が働くと、期待値は歪められて判断されがちです。
期待値とは
それが起こる可能性に、得られる最大値を掛けたもの。
例えば、80%の確率で100万円が手に入るなら、80%×100万円=80万円で80万円が期待値になります。
プラスの期待値の場合は、確率や金額が変わってもほぼ確実に利益が得られる方を選択できます。
しかし損失に対してはどうでしょうか?
例えば、ポジションを保有している状態で以下の状況になったとします。
B:50%の確率で100万円を失うが50%の確率でそのまま(損失が0のまま)の場合
計算によるとAとBの期待値は、どちらも‐50万円で同じはずですが、損失を回避できるBに賭けてみようという気持ちが強くなりがちです。
このように、正しい判断ができなくなっている心理こそが、トレーダーが大きく負けるときの根源となっているのです。
では、どうしたら良いのか、その対策を次に説明します。
プロスペクト理論を克服する方法
プロスペクト理論は、自然な感情が人間に何をさせるのかを教えてくれています。
つまり、なんとなくとか、自然な感情の赴くままにトレードをすると必ず負けると言っても過言ではありません。
自然な感情に人間は、知識と準備がなければ逆らえません。
プロスペクト理論を克服するには、以下の4つの方法が有効です。
・ルールを設定する
・ルールを守る
・長期的視野を持つ
・価値観とセルフイメージを変える
ルールを設定する
トレードでは感情が邪魔になることはお伝えしました。
しかし、感情を排除することはできません。
そこで、2連敗したら1時間休憩するとか、3連敗したらその日はトレード終了などのルールを決めることにより、感情に流されてトレードし損失が膨らんでいくことを防ぐことができます。
特に損切りや損失額についてのルールは、以下のようにきちんと決めておく必要があります。
利食い・損切りポイントを決める
エントリーの時点で、どこで利食いするのかとどこで損切りするのかを決めておきます。
逆に言うと、この2つが決まらないうちはエントリーをしないということです。
上がりそうだから買った、ではプロスペクト理論の渦に自ら飛び込むようなものです。
例えば、上昇相場で買いだと判断した場合、次のステップで買いを入れます。
STEP 1:エグジットポイントを決める
儲かることより、損失を出したときのことを考え、損切りするところまでの距離を測ります。
STEP 2:どこまで行ったら利食いするのかを測る
リスクリワードレシオが、損失<利益になっているのが理想です。
リスクリワードレシオとは
1回のトレードにおける利益と損失の比率
想定される損失をリスク、想定される利益をリワードと言う
トレーダーが自分の勝率やリスクリワードの数値を把握ができているかいないかで、「どうしたら勝てるようになるのか」を自分で判断可能かどうかが決まります。
例えば、勝率50%のトレーダーがいたとします。
損失1に対して利益が1、つまりリスクリワードが1であれば、このトレーダーはどれだけトレードしてもお金は増えません。
お金を増やすためには勝率を増やすかリスクリワードを上げなければなりません。
勝率が50%と決まっているなら、リスクリワードは損失1に対して利益を1.5や2などに設定すれば、このトレーダーは資金を増やし続けることができるでしょう。
値幅の少ない相場ではリスクリワードを1以上にすることは難しいため、勝率を上げることでトータルの利益を上げる戦略をとることもあります。
考え方の基本として、リスクリワードは1以上になるようにトレード戦略を建てることが大切だ、ということを理解しておきましょう。
STEP 3:エントリーポイントを決める
高値のブレイクや移動平均線の上抜け、一目均衡表の雲抜けなど、エントリーのサインはトレード手法によって様々です。
自身に合ったトレード手法のタイミングで良いと思います。
STEP 4:エントリーする
最初に損切りと利食いのオーダーを入れてしまえば、あとは見ているだけです。
先に準備を終わらせているので、感情がトレードに入り込む余地がありませんし、考えて行動する必要も一切ありません。
経験の浅いトレーダーや感情が押さえられないトレーダーほど、何も見ない方がいい場合もあるでしょう。
STEP 5:クローズを待つ
あとはストップオーダーかリミットオーダーによりポジションが自動的にクローズするのを待ちます。
大切なことは、トレーダーの仕事は感情が動く前の冷静な時、つまりエントリーする前にすべての仕事が終わっている状態にしておくことです。
ロスリミットを設定する
ロスリミットとは
自分の塩梅で損失額に制限を設けるもの
(例:1日の損失額は証拠金の5%以内にする)
ロスリミットを設定することでその制限にかかりそうであれば、少し頭を冷やそうと考えたり、それ以上の損失を防ぐことができます。
トレード中には何もしなくていいよう、事前に以上のような準備をしておけば「しなければならないこと」が感情によって「できなくなる」ことを防ぐことができます。
ルールを守る
すばらしいルールでも、守らなければ何の意味もありません。
そして、FXの取引は完全に自己責任になのでルールを破っても誰も叱ってくれません。
ルールを守るのは単純なことのように思えますが、実際はとても難しいことなので、そのためにはさまざまな工夫が必要になります。
決めたルールをいつでも見える場所に貼っておくのもいいでしょう。
熱中すると状況を把握できず、感情のまま取引することが多くなるので、モニターの横やいつでも視界に入る場所に大きくはっきり分かる字で貼っておきましょう。
長期的視野を持つ
長期的視野を持つことで、1回1回のトレードの勝ち負けにこだわらなくなると同時に、資金を増やす計画が台無しになることを恐れるようになります。
したがって、どのくらいのペースでトレードすれば、いつ、いくらになるのか、を知らなければなりません。
例えば複利で運用した場合で考えてみましょう。
複利とは
稼いだ利益をさらに投資し増やしていく運用方法。
対して単利とは元本の金額を変えずに運用していく方法。
証拠金に対して毎日0.28%の利益が上げられるトレーダーは1年後に証拠金はいくらになっているでしょうか?
答えは約2倍です。0.28%の利益ということは、1万円なら28円です。
このくらいなら出来そう、と思えるパフォーマンスですね。
これをコツコツ続けていけば1年後には2倍になっている、という計画をしっかりトレーダーが認識していれば、その計画を1回のトレードで台無しにすることの恐ろしさがわかると思います。
これを知っているか知らないかで、一時的な感情が押さえられずに暴走トレードをしてしまう自分を押さえられるかどうかが決まると言っても過言ではありません。
価値観とセルフイメージを変える
普段の一個人の価値観とトレーダーの価値観をごちゃごちゃにしないことが大切です。
普段の自然な自分ではトレードは勝てません。
トレーダーにはトレーダーの価値観が必要で、トレードモードになった時にはトレーダー専用の価値観をしっかり持っていることが大切です。
例えば以下のような価値観がトレーダー専用の価値観です。
・ルールを守ってトレードする
・1回1回のトレードで一喜一憂せず、常に冷静な思考を保つ
・理性的な自分が、感情的になった自分をコントロールする
・損失を受け入れ、損切りラインをずらしたりしない。決められたところできちんと損切りする
・戦略とルールに淡々と従ってトレードした自分を評価する
上記のようなことができた自分はすばらしい!と評価し、そういう自分にはトレーダーとしての価値がある、と考える価値観を持ちましょう。
勝つことに価値がないとは言いませんが、勝つために取り組んでいる自分や、戦略やルールに従ってトレードする自分に価値があると考え、トレーダーとしての自分に自信を持つことが大切です。
まとめ
トレーダーは人間としての自然な感情をコントロールできなければ、勝ち残ることはできません。
その感情は誰もが持っている自然なものなので、その感情をコントロールすることは並大抵のことではありません。
しかし、お金に絡んだ感情にはパターンがあり、そのパターンを回避するためにいろんな対策が考えられます。
トレーダーそれぞれが、自分に合ったプロスペクト理論回避方法を身に着け、10%の勝ち組トレーダーに入れるように努力を惜しまず、がんばりましょう!
筆者:海外FXラボ編集部
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