移動平均線(Moving Average)は初心者から上級者まで、多くの方が利用する人気のインジケーターです。
他のテクニカル分析と比べると簡単なので、初心者の方が初めに覚えるテクニカル分析としておすすめです。
今回は移動平均線の種類や使い方、注意点などを解説します。
移動平均線とは?
移動平均線とは、過去の値動きから一定期間の平均価格を計算し、平均価格をつなぎ合わせたラインのことです。
移動平均線はポピュラーなテクニカル分析の一つで、相場のトレンドを知るために使用されます。
例えば、3日単純移動平均値は3日分の値動きを平均したものです。
そして、毎日の3日単純移動平均値を線でつないだものが3日単純移動平均線になります。
移動平均線は4種類
主要な移動平均線は全部で4種類あります。
まず、それぞれの特徴・計算方法・メリット・デメリットについて見ていきましょう。
その後に例を使って実際に計算していきます。
SMA(単純移動平均線)
まずは、SMA(単純移動平均線)です。
▼5日SMA
SMA(Simple Moving Average)とは、一定期間の過去の終値を単純に平均したものです。
計算式:1日目+2日目+…最終日/日数n
例えば、5日単純平均移動線を計算する場合は、1日目から5日目の終値を足して5で割ります。
最新の終値を重視したりせず、全ての終値を平等に扱う計算方法になります。
SMAは4種類の平均線の中で一番シンプルで日本で最も人気のある平均線です。
SMAはMT4上で「Simple」と表記されています。
SMAを使うメリット・デメリット
・長期的なトレンドの方向が分かりやすい。
・支持線(サポート)と抵抗線(レジスタンス)として作用する。
・単純な過去の価格の平均値なので、今後のチャートの動き(上昇/下降トレンド)を予測しにくい。
EMA(指数平滑移動平均線)
次は、EMA(指数平滑移動平均線)です。
▼5日EMA
EMA(Exponencial moving average)は、単純移動平均線の欠点を補正して開発された移動平均線です。
過去より直近の値動きを重視することでより精度の高い値動きを予想します。
計算式:1日目+2日目+…最終日×2/(日数n+1)
※最終日の値を2倍するので、分母側に日数を1日分足します。
EMAでは直近の終値を2倍してから、一定期間の終値を平均します。
例えば、5日指数平均移動線の場合、まず5日目の終値を2倍してから1日目~5日目の終値を足し、6で割ります。
つまり、一番新しいデータである5日目の終値を重視した計算方法です。
EMAは欧米ではSMAよりも人気があり、多くの人に使われています。
EMAはMT4上で「Exponential」と表記されています。
EMAを使うメリット・デメリット
・SMAよりも直近の値動きに早く反応する。
・大きな価格変動や横ばいの相場の時は、ダマシが多い。
・長期のトレンドを調べるのには向かない。
SMMA(平滑移動平均線)
続いて、SMMA(平滑移動平均線)です。
▼5日SMMA
SMMA(Smoothed Moving Average)は、反応を早めるのではなく、ダマシを減らすことを目的としたインジケーターです。
直近に比重を置くという意味ではEMAと同じ考え方ですが、EMAほど直近に比重を置きすぎることがないため、より滑らかな曲線を描きます。
SMMAでは個々の平均値への加重を「指数関数的(exponential)」に減少させて平均値を出します。
計算式:
初日→1日目+2日目+…最終日/日数n
翌日以降→{前日のSMMA値×(日数n-1)+当日の終値}/日数n
SMMAは、EA(自動売買システム)に組み込まれていることがありますが、一般的にはほとんど使用されていません。
SMMAはMT4上で「Smoothed」と表記されています。
SMMAを使うメリット・デメリット
・SMAよりも長期的なトレンドの方向性が分かりやすい。
・直近の値動きに対しての反応が遅い。
LWMA(線形加重移動平均線)
続いて、LWMA(線形加重移動平均線)です。
▼5日LWMA
LWMA(Linear Weighted Moving Average)は、SMAより直近の動きに敏感で、EMAより直近の動きを重視しすぎない平均線です。
計算式:SUM/SUM Weight
分子SUM:{最終日終値×n}+{1日前の終値×(n-1)}+{2日前の終値×(n-2)}+…+{(n-1)日前の終値×1}
分母SUM Weight:n×(n+1)/2
個々の価格データの比重を過去を遡るごとに「線形的」に減少させて、平均値を計算します。
EMAのように直近の値の比重を大きくするのですが、比重のかけ方が異なります。
比重のかけ方を変えることによって、EMAの過去の価格を軽視しすぎているという点が改善されました。
LWMAはMT4上で「Linear Weighted」と表記されています。
LWMAを使うメリット・デメリット
・直近の値動きを重視しているので、平均線の中で最も反応が早い。
・平均線の中でも一番ダマシが多い。
・レンジ相場や急な変動では機能しなくなる。
・間近の終値だけ重要視され、全体のバランスが崩れるので、長期のトレンドを調べるのには向かない。
それぞれの計算例
こちらのデータをもとに、4種類の3日平均線を計算で出してみましょう。
終値 | SMA | EMA | SMMA | LWMA | |
1日目 | 100 | ||||
2日目 | 110 | ||||
3日目 | 120 | 110 | 112.5 | 110 | 113.3 |
4日目 | 130 | 120 | 122.5 | 116.7 | 123.3 |
平均線の種類によって、計算結果も全然違いますね。
SMAの計算例
計算式:1日目+2日目+…最終日/日数n
3日目のSMA値:(100+110+120)/3=110
4日目のSMA値:(110+120+130)/3=120
SMAは指定された期間の数値を平均した値です。
EMAの計算例
計算式
1日目+2日目+…最終日×2/(日数n+1)
※最終日の値を2倍するので、分母側に日数を1日分足します。
3日目のEMA値:(100+110+120×2)/(3+1)=112.5
4日目のEMA値:(110+120+130×2)/(3+1)=122.5
データが新しいほど重要性が高いので、EMAは直近の値に比重をかけて計算します。
最新の終値を重視しているから、SMAよりも平均値が最終日の終値に近いんですね。
SMMAの計算例
計算式
初日: 1日目+2日目+…最終日/日数n
※SMAと全く同じです
翌日以降:{前日のSMMA値×(日数n-1)+当日の終値}/日数n
3日目のSMMA:(100+110+120)/3=110
4日目のSMMA:(110×(3-1)+130)/3≒116.7
初日だけSMAと同じ計算方法で、翌日からは直近のSMMA値を使って計算します。
LWMAの計算例
計算式:SUM/SUM Weight
分子SUM:{最終日終値×n}+{1日前の終値×(n-1)}+{2日前の終値×(n-2)}+…+{(n-1)日前×1}
分母SUM Weight:n×(n+1)/2
3日目:
SUM=120×3+110×2+100×1=680
SUM Weight=3×(3+1)/2=6
SUM/SUM Weight=680/6=113.33333…
4日目:
SUM=130×3+120×2+110×1=740
SUM Weight=3×(3+1)/2=6
SUM/SUM Weight=740/6=123.33333…
EMAと考えが近いですが、直近の値だけ大きくするのではなく、データが古くなるごとにかける比重を段々小さくします。
一番新しいデータには「計算したい平均線の日数」をかけ、1日前のデータからはかける数を1ずつ減らしていき、最終的に一番古いデータにかける数は「1」になります。
4種類の平均線の違い
4種類の平均線の違いはデータへの比重のかけ方です。
SMAの特徴
SMAの比重のかけ方はどうなっているのでしょうか。
SMAは特に比重をかけたりはせず、どのデータも平等に扱います。
そのため、長期的なトレンドを見るのに向いていると言えます。
しかし、相場の動きを知る上で一番重要な最終日も他のデータと同じ扱いなので、最終日に動きがあってもうまく反応できません。
EMAの特徴
EMAの比重はこのような感じです。
EMAは、最終日にだけ2倍の比重をかけるのが特徴です。
そのため、最終日に動きがあった場合の反応がSMAよりも早くなります。
SMMAの特徴
SMMAの比重はこのような感じです。
SMMAでは3日平均線の4日目を計算する場合、過去に3日分のデータにかける比重が2/3で、最終日1日分にかける比重が1/3になります。
EMAとLWMAが最終日に大きく比重をかけるのに対し、SMMAは過去のデータにかける比重を小さくします。
SMMAは、SMAのように全てを平等に扱わないので、過去のデータの影響が少ないです。
また、EMAのように最終日への比重が重すぎることもないので、より滑らかな曲線になります。
3日平均線を計算する場合、他の平均線は過去3日分のデータを使って計算します。
一方でSMMAは前日のSMMA値を使って計算するため、結果的に3日以上過去のデータも計算に使用していることになります。
計算に使うデータの数が多くなるほど平均値のバラツキが少なくなるので、結果的に平均線が滑らかになります。
LWMAの特徴
LWMAの比重のかけ方はこのような感じです。
LWMAは最終日にかける比重が一番大きく、日が遡るにつれてかける比重を小さくしていきます。
そのためSMAのように全データ平等に扱うこともなく、EMAのように最終日への比重が大きすぎることもありません。
LWMAとSMMAとの大きな違いは、使っているデータの数です。
SMMAは3日以上過去のデータも使いますが、LWMAは過去3日分のデータしか使いません。
状況に合わせて平均線を使い分ける
4種類の平行線をご紹介しましたが、それぞれどんな時に使うとより効果的なのか見ていきましょう。
長期間のトレンドを確認したい時は「SMA」
SMA(単純移動平均線)は新しいデータの比重を大きくしたりせずに全てのデータを平等に扱うので、長期間のトレンドを正確に確認することができます。
トレンドはトレーダーの心理を表すものと言われており、長期間のトレンドを確実に掴むことができれば、より大きな利益につながります。
SMAは日本で多くのトレーダーが使用しています。
沢山の人が同じ平均線を使っているということは、多くの人が同じタイミングで注文する可能性が高いということです。
つまり、平均線は使う人が多ければ多いほどより有効になるという傾向にあります。
売買サインに素早く反応したい時は「LWMA」
LWMA(線形加重移動平均線)は直近の終値にかける比重が大きいため、トレンドへの反応が素早いです。
そのためスピード重視のスキャルピング手法と相性がいい移動平均線となっています。
ダマシが嫌な時は「EMA」
EMA(指数平滑移動平均線)はトレンドへの反応速度も遅くなく、ダマシが少ないバランスの良い移動平均線です。
そのため沢山のトレーダーに支持されています。
移動平均線を設定する方法
ここからは、お使いのプラットフォームで移動平均線を設定する方法をご紹介します。
スマホ版のMT4で移動平均線を設定する手順を見ていきましょう。
MT4とMT5のスマホアプリの設定手順はほどんど同じなので、同時に説明します。
STEP1:チャートを開き、「f」アイコンをタップ
MT4/MT5アプリを開き、移動平均線を表示させたい通貨ペアのチャートを表示させます。
チャートを開いたら、画面上部にある「f」アイコンをタップします。
STEP2:メインウィンドウをタップ
インディケータの画面に移動するので、「メインウィンドウ」をタップします。
STEP3:「Moving Average」を選択
インディケータ追加画面が表示されるので「Moving Average」を選択します。
STEP4:移動平均線の詳細を設定し、「完了」ボタンをタップ
移動平均線の詳細設定画面に移動するので、「期間」「メソッド」「スタイル」をそれぞれ設定します。
①期間:ここでは、ローソク足何本分の平均線を表示するかを選ぶことができます。
例えばチャートが日足の場合、期間を「25」にすれば25日平均線が表示されます。
②メソッド:以下の4種類の中から移動平均線の種類を選択します。
・Simple:単純移動平均線(SMA)
・Exponential:指数平滑移動平均線(EMA)
・Smoothed:平滑移動平均線(SMMA)
・Linear Weighted:線形加重移動平均線(LWMA)
③スタイル:ここでは表示させる移動平均線の線の色や太さを選ぶことができます。
▼移動平均線の「スタイル」画面
ここまで全て設定し終えたら、画面右上にある「完了」ボタンをタップして移動平均線の設定を完了します。
パソコン版のMetaTraderで移動平均線を設定する手順を見ていきましょう。
STEP1:移動平均線を開く
まずは、プラットフォームを開きます。
そして「挿入」⇒「インジケーター」⇒「トレンド系」⇒「Moving Average」の順にクリックします。
STEP2:移動平均線の設定を選ぶ
移動平均線の設定を選びましょう。
①期間を設定:ここでは、ローソク足何本分の平均線を表示するかを選ぶことができます。
例えばチャートが日足の場合、期間を「5」にすれば5日平均線が表示されます。
②移動平均線の種類を設定:4種類の中から選ぶことができます。
・Simple:単純移動平均線(SMA)
・Exponential:指数平滑移動平均線(EMA)
・Smoothed:平滑移動平均線(SMMA)
・Linear Weighted:線形加重移動平均線(LWMA)
▼移動平均線の形設定
▼移動平均線の太さ設定
④「OK」ボタンをクリック:「OK」ボタンをクリックすれば、設定が完了です。
複数の線を使う場合、線のスタイルを変えたほうが見やすいですね。
上位足の移動平均線の出し方
移動平均線の設定画面の「期間」の欄に入力する数字を工夫すれば、下位足のチャート上に上位足の移動平均線を表示することができます。
以下の計算式で入力する数字を簡単に計算することができます。
計算式
①ローソク足にかける数字 = 表示したい移動平均線の時間足 ÷ チャートの時間足
②入力する期間 = ローソク足にかける数字(①で出した答え) × ローソク足の本数
では、5分足のチャート上に1時間足のMA20(ローソク足20本分)を表示する場合に入力する期間を実際に計算してみましょう。
計算式:
①1時間足(60分)÷5分足=12
②12×MA20=MA240
「240」を移動平均線の設定画面の「期間」のところに入力すると、1時間の移動平均線が表示されます。
同じ手順で「5分足の移動平均線」も設定すれば、チャート上に2つの平均線を同時表示することができます。
▼赤の「5分足の移動平均線」と青の「1時間の移動平均線」が同時に表示されます。
複数の移動平均線の応用法(ゴールデンクロス、デッドクロス)
複数の移動平均線を同時に表示する場合、短期線が中・長期線と交差したタイミングを売買のタイミングと考える人も多いです。
そのように平均線同士が交差することを「ゴールデンクロス」または「デッドクロス」と呼びます。
ゴールデンクロス【買いサイン】:
価格が大きく下落した後、短期の移動平均線が、長期の移動平均線を下から上に突き抜ける現象のこと。
デッドクロス【売りサイン】:
価格が大きく上昇した後、短期の移動平均線が、長期の移動平均線を上から下に突き抜ける現象のこと。
「ゴールデンクロス」と「デッドクロス」は長期投資(3か月以上)に向いています。
移動平均線を使った取引法
ここまで、移動平均線の種類や表示の仕方について見てきました。
ここからは移動平均線をどのように活用すればいいのかを具体的に見ていきましょう。
トレンドによる取引方法
これは一番単純なやり方ですが、売買するときに役立ちます。
平均移動線が上向きか下向きかによって、「買い」か「売り」かを判断します。
上向きの時(上昇トレンド)は買い注文、下向きの時(下落トレンド)は売り注文をします。
短期、中期、長期の移動平均線を同時表示して、傾きが同じ方向であればより信頼性が上がりますね。
注意点としては、移動平均線は割と遅く表示されるインジケーターなので、トレンド相場での使用はOKですが方向性のないレンジ相場には使えません。
支持線(サポートライン)と抵抗線(レジスタンスライン)として活用する
支持線(サポートライン)とは
下落中の価格は下にある移動平均線に接触すると反発します。
そのときの移動平均線を「支持線」と言います。
支持線に接触したら価格が上がっていくので、「買い」ポジションを持ちましょう。
抵抗線とは
上昇中の価格は上にある移動平均線に接触すると反落します。
そのときの移動平均線を「抵抗線」と言います。
抵抗線に接触した後は「売り」のポジションを持つ絶好のタイミングです。
▼1時間足48EMA
移動平均線の角度
移動平均線の傾斜がキツければキツいほど値動きが急で、相場の勢いが強いと判断できます。
移動平均線とローソク足の離れ具合(乖離率)
乖離(かいり)とは「離れる」という意味です。
FXでは急激な値動きが起きて移動平均線がすぐに追いつけず、できてしまった「ローソク足と移動平均線の間の空間」を乖離と呼んでいます。
ここでポイントなのが「乖離はいつか必ず埋まる」ということです。
観察していると、一旦乖離したローソク足が段々と平均線の方に引き寄せられていくのが分かります。
移動平均線より上に離れた価格はそのうち下がり、下に離れた価格はそのうち上がっていくのです。
つまり、価格が移動平均線から大きく上に離れた場合は「売り」、下に離れた場合は「買い」のタイミングになります。
▼乖離した価格が平均線に戻っていく様子
乖離はSMA値が大きいほど明らかになります。
下図のようにSMA5の赤線は価格とほぼ一致しています。
SMA200は200時間の平均なので、青線はあまり上下に動かず、動いてる価格に対して乖離率が高いです。
乖離率を見てエントリーするかを判断したい場合は、期間を大きめに設定しましょう。
移動平均線はどれがいい?
どの移動平均線が一番であるかには、ベストアンサーがありません。
個人のトレード手法で時間足と期間を決めていくしかないのです。
一般的に移動平均線の期間は、わかりやすいように切りがいい期間を設定するトレーダーが多いです。
5分や15分の短い時間足チャートではトレンドを掴みにくいため、1時間以上の長めの時間足の方がオススメ。
時間足 | 移動平均線の期間 | 備考 |
15分足 | 4、8、12、16、24、48、64、96など | 15の4倍は1時間なので、4の倍数を使うトレーダーが多いです。 |
1時間足 | 4、8、12、24、36、48、72、96、120など | 1日単位で使用している人が多いです。 |
日足 | 5日、10日、20日、21日、25日、50日、75日、100日、200日など | 21はフィボナッチ数なのでよく使われます。 |
週足 | 13週、26週、52週など | 13週(1シーズン)、26週(半年)、52週線(1年)の使用はゴールデンクロスを活かすためです。 |
月足 | 12ヶ月、24ヶ月、60ヶ月など | 1年は12ヶ月なので、それぞれ1年、2年、5年となります。 |
おすすめの移動平均線の期間の組み合わせ
おすすめなのは、日足で使われることの多い「25」と「200」という期間の組み合わせです。
期間「25」という数値は日足でいうと約1ヶ月間を、「200」は日足で約1年間を表しています。
短・中期移動平均線である25日移動平均線と、長期移動平均線である200日移動平均線を組み合わせて見ることで、エントリーチャンスを見つけやすくなります。
この2つの移動平均線のクロスを売買のサインにしてエントリーのタイミングを見極めるといいですね。
グランビルの法則
「グランビルの法則」は米国金融記者のジョセフ・グランビルが考案した投資手法で、価格と移動平均線との関係を利用した8つのチャートパターンを指します。
買い4通り、売り4通りの合計8つの法則で価格の先行きを判断する投資理論です。
グランビル法則の8つのパターン
8つのパターンを紹介します。
パターン1:新規買い
移動平均線が長期間下落、または横ばいで推移した後、価格が上昇に転じ、移動平均線を下から上に突き上げた場合は「買い」。
パターン2:押し目買い
価格が移動平均線を下回った場合でも、移動平均線が上昇中の時は「押し目買い」。
パターン3:買い乗せ
移動平均線より上にある価格が足踏み状態の時、上昇中の移動平均線が割り込むことなく、価格が再度上昇に転じたときは「買い乗せ」の局面である。
パターン4:短期の買い
下向きになっている移動平均線よりも、さらに価格が大きくかけ離れて下落した(下への乖離幅が大きくなった)場合は戻ることが多いので、「短期的な買いポジション」を入れる。
パターン5:新規売り
移動平均線が長期間上昇、または横ばいで推移した後、価格が下落に転じ、移動平均線を上から下に突き抜けたら「売り」のサインである。
パターン6:戻り売り
価格が移動平均線を上回った場合でも、移動平均線が下落中の時は、再下降の可能性が高いので「戻り売り」。
パターン7:売り乗せ
移動平均線より下にある価格が足踏み状態の時、下落中の移動平均線が割り込むことなく、価格が再度下落に転じたときは「売り乗せ」の局面である。
パターン8:短期の売り
上向きになっている移動平均線よりも、さらに価格が大きくかけ離れて急騰した(上への乖離幅が大きくなった)場合は戻ることが多いので、「短期的な売りポジション」を入れる。
単純移動平均線(SMA)にはダマシが多い?
例えば昨日の終値よりも今日の終値の方が高くても、平均値は下降を示す場合があります。
3日SMAの場合、本日の移動平均線を求めるときに計算式で一番古いデータである3日前の終値は計算から外されてしまいます。
その外された終値が今日の終値より高い場合は、平均値が下がります。
その結果「直近のトレンドは上昇しているのに、SMAは下降を示している」という状況が生まれます。
これがSMAを使用していると、ダマシが出てきやすい理由です。
こちらのデータをもとに、実際に3日SMAを計算してみましょう。
日数 | 1日目 | 2日目 | 3日目 | 4日目 |
終値 | 130 | 100 | 110 | 120 |
3日目の3日SMA:(130+100+110)÷3=113.333…
4日目の3日SMA:(100+110+120)÷3=110
終値は3日目から4日目にかけて上がっているのに、平均値は下がっていますね。
SMAのこういった問題点を改善するため、EMAが作られました。EMAは直近のデータを重視することで、トレンド転換時の素早い反応を可能にしました。
移動平均線はレンジ相場には使えない
レンジ相場
レンジ相場とは価格が一定の値幅の中で上がったり下がったりを繰り返す相場のことで、トレンド相場とは逆に方向性がないです。
どのタイミングで反発したりするのか予想ができず、遅効性のある移動平均線を使用しても平均線が値動きについていけないです。
つまり、移動平均線はレンジ相場で役に立たないテクニカル分析なのです。
移動平均線の過信はNG
移動平均線は遅効性のインジケーターです。
トレンドが変動し始めた段階ですぐに反応することは難しく、どうしてもレートの動きより遅れてしまいます。
特に今回のコロナショックのような暴落は、テクニカル分析では予測不可能です。
ツールを利用する際は、そのツールが万全でないことを理解し、ツールの特性を把握しておく必要があります。
テクニカル分析とファンダメンタル分析を併用し、勝率を上げましょう。
まとめ
今回は移動平均線について詳しく解説しました。
移動平均線は使い方も簡単で、FX初心者でもすぐに使えます。
移動平均線の使い方や、移動平均線を参考にしてエントリーするタイミングは人それぞれです。
いろいろ試して、自分のトレード方法に適した平均線の使い方をマスターしましょう。
筆者:海外FXラボ編集部
海外FXの仕組みや業者の特徴をわかりやすくご紹介。
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